モニカが結婚について照れくさそうに打ち明けたら、焦り顔のドニに強く両手を握られた。

「やめておきなよ」

「どうして?」

「そいつじゃモニカを幸せにできない。モニカは僕が――」

ドニの告白を遮るかのようにドアの取っ手にぶら下げられた和鈴が鳴った。

外の寒気とともに入店したのは、黒いマントを羽織ったひとりの青年である。

美々しい面立ちだが眉間に不愉快そうな皺を刻んでいるので台無しだ。

「いらっしゃいま……え?」

無言で近づいた客にモニカから手を引きはがされ、ドニは驚いている。

舌打ちまでしたその客はドニを睨んで苦情をぶつけた。

「“そいつ”呼ばわりするのは相手を知ってからにしろ」

「もしかして……」

ドニがモニカに視線を振ると、モニカは嬉しそうにフフと笑って紹介した。

「私の婚約者のシュナイザーよ。大体いつも眉間に皺を寄せているけど不機嫌なわけじゃないから安心して」

「いや、かなりムカついているんだが」

突然現れた上に横柄な口の利き方をされ、ドニもムッとしている。

なにか言い返そうと口を開いた彼だが、眉間の皺を解いて目を瞬かせた。