追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

「お集りの皆さま、私は騎竜兵隊長のハンス・ゾフラムと申します。生まれはロストブで風の精霊憑きです。陛下のご命令でこれから皆様に力をご覧いただきます。ご婦人方はスカートを押えてください。では参ります」

ハンスが右手のひらを掲げると、窓が開いていないのに風を感じた。

風は徐々に強くなり、ハンスの手の動きに合わせて縦横無尽に吹く。

かつらが飛んで慌てる紳士やスカートがまくれそうで悲鳴を上げる婦人がいて、ダリアの羽根扇は鳥のように飛ばされて狙いすましたかのように父親である公爵の頭に当たった。

両腕を頭上で振り回し「なにか飛んできたぞ!」と大声を出す公爵に、ドア前に立っているベルナールが口を押えて笑っている。

モニカの周囲はさほど風は強くなく、呆気に取られてホールを見つめてから視線を隣に移した。

(もしかして、この風を吹かせているのは……)

腕組みをしていてわかりにくいが、シュナイザーの人差し指がわずかに動いている。

風はそれに従い吹いており、操っているのはハンスではなくシュナイザーのようだ。

その目的は――。

「ゾフラム騎竜兵隊長、もうよい」