追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

というよりロストブでは、プロではない少しピアノが上手な人が教会の催事で子供向けの曲を弾いてくれただけなので、リサイタル自体が初めてだ。

とても素敵だと感じるモニカだが、聞きなれない美しいメロディーに眠気がさす。

つい船を漕いでしまったら、シュナイザーに肘でつつかれ起こされた。

「あ、ごめんなさい」

「疲れたのか。寝かせてやりたいがもう少し我慢してくれ」

シュナイザーは怒らずに、翡翠色の瞳を優しく細めてくれた。

モニカの鼓動はたちまち高まり、そのおかげで眠気が吹っ飛んだ。

頬を染めればクスリと笑われ、大きな手がモニカの頭を撫でてくれた。

(私がシュナイザーのことを思い出してから、随分優しいのね。照れるじゃない)

予定の三曲が終わると、シュナイザーが立ち上がる。

「リクエストを受け付けるそうだ。誰か彼に弾いてほしい曲はあるか?」

十人ほどの手が上がったが――。

「私がリクエストしましょう」

ゴウランガ公爵の野太い声が響くと他の者は遠慮した。

この中で皇帝の次に位が高いのが公爵であるからだ。

ピアニストの方へゆっくりと歩み寄った公爵に注目が集まる。