追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

キスされそうな距離で翡翠色の瞳がいたずらに弧を描き、モニカの鼓動を弾ませる。

(恋をするって幸せなのね。バーヘリダムに来てよかった)

聖女になるよりも、彼の妻となって共に生きたいとモニカは感じる。

今が幸せすぎて、バンジャマンにまだ覚醒のチャンスはあると言われたことも大災厄が迫っていることも忘れそうになっていた。

舞踏会にはベルナールも客として参加している。

見目好く宰相という高い地位にある彼は壁際で貴族令嬢たちに囲まれていたが、モニカとシュナイザーが三曲踊り終えると「恐れながら」と近づいてきた。

「陛下は他のご令嬢方とも踊ってください。その間、私がモニカ様のお相手を務めます」

いくら婚約者といえども続けて何曲も同じ相手と踊るのはマナー違反らしい。

シュナイザーは小さく舌打ちし、彼が他の女性と踊るのは嫌だとモニカもやきもちを焼きそうになる。

けれども刺さるような視線を感じて壁の方を見ると、ベルナールを囲んでいた女性たちに睨まれて肩を揺らした。

モニカより彼女たちの方が嫉妬深そうだ。

「スプラドア宰相、私はひとりで待っていますので――」