(そうだ私、来月にはザッくんの妻になるんだわ。もう嫌じゃないし、夫婦の夜の、ええとその、ああいうのもザッくんとなら……)

モニカが真っ赤に頬を染めたら、「あのさ」と呆れと冷やかしの混ざったようなベルナールの声がする。

「ラブシーンは城に戻ってからにしなよ」

「モニカも大人になったんだな」

頭の後ろで手を組み、のんきに笑っているのはハンスだ。

恥ずかしくなって慌ててシュナイザーから離れたモニカは、そこで「あっ」と気づいた。

「皇帝陛下がザッくんということは、もしかしてあなたたちはルーくんと……」

少年時代のベルナールは、モニカが七歳、彼が十一歳の時に別れた。

ベルナールは火の精霊憑きで、シュナイザーほどではないがよくモニカに構ってくれた優しい少年だった。

精霊が離れてしまい亡くなったと聞かされ泣いた記憶があるけれど、それが教会の嘘であることはもう知っている。

ベルナールは教会に売られたのだ。

ベルナールについては思い出せたが、視線をハンスに向けたモニカは首をゆっくりと傾げた。

「ハンスさんも修練所にいたんですよね?」