別れの挨拶もなく置いて行かれて、裏切られたような気持ちになったのだ。

「ずっと一緒にいてくれるっていったのに。私も連れて行ってほしかった!」

あの時言えなかった文句を今ぶつけたら、シュナイザーが困ったように眉尻を下げた。

「国軍に追われるのがわかっていたから、さすがにお前を連れていけないだろ。だが……悪かった。寂しい思いをさせたな」

子供の頃のようにコクンと頷けば、たちまちモニカの目に涙が溢れた。

優しい表情のシュナイザーが両腕を広げると、迷いなく飛び込んでその胸に顔を埋めた。

モニカを守る腕は逞しく、胸や肩は広くて声は低いが、子供の頃と同じ安心感に包まれた。

「もうどこにも行かないで」

しゃくりあげながら請うモニカを、彼はさらに強い力で抱きしめてくれた。

「ああ。今後はお前のそばにいる。離れないと約束するから泣くな」

「うん」

シュナイザーがモニカの顔を上に向かせ、額に唇を落とした。

子供の頃にキスされたことはなく、モニカは大人になった彼を急に異性として意識し鼓動を高まらせた。