追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

港内を視察していたシュナイザーは、急に胸騒ぎがして立ち入り途中の倉庫からすぐに外に出たそうだ。

するとぼろ布になにかを包んで肩に担いだ男が、港から出て行こうとしているのが目に留まった。

マーケットの買い物にしてはおかしな荷物だと感じたシュナイザーが近衛兵に命じて呼び止めようとしたら、男が急に走り出した。

その際に男の肩の荷物からキラリと光るものが落ちて、シュナイザーが拾ったという。

「ほら返す。バンじいからもらったんだろ?」

黒い軍服のポケットから取り出されたそれは、組紐のついたガラス玉だ。

「ありがとうございます。陛下はバンジャマンさんとお知り合いなのですか?」

「ああ。昔、行き倒れていた俺を救ってくれた恩人だ」

(行き倒れ? 陛下は生まれながらの大国の貴族じゃないの?)

モニカが目を瞬かせたら、ベルナールが呆れの目を宙に向けて口をはさんだ。

「あれ、いつまで飛ばしておくんだよ。そろそろ下ろしてやって」

幌馬車の車体と共に、悪党ふたりはまだ同じ場所を回り続けていた。

ぐったりと脱力しているので、気絶しているのかもしれない。