追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

美麗な顔には深いしわが刻まれているが、それは不機嫌というより心配からの苛立ちのように思えた。

「もっと優しい言葉をかけてあげなよ。モニカ、怖かったろ? もう大丈夫だよ」

そう言ったのはベルナールで、モニカの縄と猿ぐつわを外してくれた。

他に護衛の姿はないと思ったら、悪党が検問と言った道の向こうから兵士がひとり駆けてきて、それはハンスだった。

「怪我はなさそうだね」

シュナイザーの腕から下ろされ、やっと自分の足で立つことができたモニカは、深々と頭を下げた。

「助けてくださいましてありがとうございます」

「お礼だけか?」とシュナイザーに睨まれる。

「勝手に抜け出してすみませんでした」

「まったくだ」

偉そうに腕組みをしてフンと鼻を鳴らしたシュナイザーにモニカは首をすくめる。

ベルナールがよしよしとモニカの頭を撫でてくれて、ハンスが日焼けした肌に白い歯を見せて笑った。

「まぁ無事だったんだからよかったじゃないか。助けるのが遅れてごめん。港で拉致されたのにシュナイザーが気づいたんだけど、大勢の人がいる前で力は使いたくないからさ」