追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

(バンジャマンさんとドニにお土産を買うわ。なっちゃんとメイドさんたちにはお菓子がいいわね)

ショール一枚しか羽織っていないが少しも寒いとは思わず、むしろ熱気で暑いほどだ。

「別嬪さん、新鮮なエビはどうだい?」

魚介売りの男性に声をかけられたら「買うわ」と目を輝かせた。

「あなたのほっぺみたいなリンゴはいかが?」

果物売りの女性に真っ赤なリンゴを差し出されたら、「五つください」と張り切った。

(楽しすぎるわ。毎日来ようかしら)

両手に抱える麻袋はすぐにはち切れんばかりに膨らんだ。

それなのにモニカはお菓子やパンを売るテントの方へと人波を縫って進む。

その時、誰かが「皇帝陛下だ」と声を上げたので、ギクリとして振り返った。

周囲もざわざわし始めて、皆の視線の先には軍服姿の一団があった。

小柄なモニカなのでチラチラとしか見えないが、十人ほどの護衛に囲まれたシュナイザーが停泊中の大型商船から下りてきたようだ。

ベルナールの姿もある。

港で働く男たちや船員がオロオロとしているので、抜き打ちの視察なのだろう。

「ありゃ積み荷にマズいものが入ってたな」