「おはようございます。こんな早くに開いているお店があるんですか?」
港のマーケットで買い物をしてきたのだと教えられ、モニカは夜空の散歩をした時にシュナイザーからもそんな話を聞いたと思い出した。
「港のマーケットは有名よ。あなた行ったことがないって引っ越してきたばかりなの?」
「そんなところです」
「水揚げされたばかりの魚介だけじゃないのよ。野菜や果物、日用品も売っているわ。焼き立てパンやお菓子もあるわよ」
「お菓子も! ご親切にありがとうございます。行ってみます」
いつもとは反対周りの乗合馬車に揺られ、モニカは港前で下車した。
するとそこは昼間のメインストリートの比じゃないほどの賑わいで、目を見張った。
カラフルなテントの下に三十ほどの出店があり、買い物客でごった返している。
打ち寄せる波音やカモメの声、客を呼び込む威勢のいい声が響き、モニカの気分が高揚した。
いつも脱走するのは午後からなので、今日は時間がずれているせいか尾行のハンスの気配はなく、それも解放感に拍車をかける。


