追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

世の中には精霊憑きを欲しがる人もいるので、捕らえられて売られる可能性を考えたのだ。

なぜ見破られたのかと冷や汗をかくシュナイザーに、バンジャマンは好々爺の顔で笑った。

『怯えんでもいい。なにもせんよ。わしも元精霊憑きなんじゃ』

『え?』

『いや、前世でと言うべきじゃな』

バンジャマンの視線は確かにシュナイザーに向いているのに、体を通り越し他の誰かを見ているような気がした。

思わず後ろを振り向いたシュナイザーだが、店内にはふたりしかおらず顔を戻した。

バンジャマンがホッホと笑う。

『久しぶりじゃな。元気そうでなによりじゃ。今はその子に憑いておるのか。よい目の子を選んだの、ロハ・セイネル・ヒエリウス・ウインドルよ』

その瞬間、シュナイザーの中で嵐が起きた。

感情が激しく揺さぶられて泣きたくもないのに涙が溢れる。

苦しくて胸をかきむしり『ああ!』と叫んだ後には、急に凪いで目の前に透明な人が現れた。

中世的な顔立ちで肩下までの髪を風になびかせ、膝丈までのローブ姿である。

あぐらを組んで宙に浮いているその人は、いたずら好きの少年のようにニヒヒと笑った。