追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

「手を出せ。ワルツの練習だ」

強引なリードであるが、ベルナールより踊りやすいとモニカは感じた。

足が自然と動いて正しいステップを踏める。

シュナイザーが口ずさむ三拍子よりモニカの鼓動は速く鳴り立て、頬が熱くなった。

けれどもときめいていると悟られないよう、プイと顔を背けて頬を膨らませる。

やれやれと言いたげなため息がモニカの前髪にかかった。

「お前のためなんだ。聞き分けてくれ」

それなら仕方ないとは、今のモニカは思えない。

自分の頭で考えずに権力者の指示に従うだけではいけないと教えてくれたのは、ほかならぬ彼である。

(状況が変わったって言ってだけど、具体的には教えてくれないのね。納得できないわ)

顔を背けるモニカの視界にシュナイザーが入ろうとしてくるので、今度は逆側を向いた。

「俺を見ろ」

「嫌です」

「可愛くないぞ」

「そう思われるのでしたら、結婚をやめましょう」

さらに頬を膨らませて不満の意思を示したのだが、思いがけず優しい声を聞いた。

「モニカを放っておけるわけないだろ。俺が守る。その日が来るまでは……」

(え? 会話になっていないような)