追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

「ごめんなさい。衣装が合わなくなることを少しも考えていなかったわ。考えが足りないところをなかなか直せない。私って駄目ね」

すると慌てた親子がメジャーを当てながら口々に言う。

「まだ仮縫いの段階ですのでサイズはいくらでも直せます。まったく問題ございません」

「ご結婚準備ですからどうかお幸せな気持ちでいてください。モニカ様にはいつもお気遣いいただいて、申し訳ないと思うのはこちらの方です。貴族令嬢といえばわがままな方が多くて困るのに……と失言でした」

(好きな人との結婚なら、お菓子を食べている時のように甘くて幸せな気持ちになれるんでしょうね。私は陛下のこと好きになれるかしら)

異性に恋をしたことはないが兄のように慕っていた人は過去にいた。

ふと思い出しかけてモニカがブンブンと首を横に振ったら、採寸途中の仕立て屋の母親が手を止めた。

「モニカ様?」

「ごめんなさい。なんでもないの」

慌てて取り繕うようにモニカは微笑む。

兄のように慕っていたその人は、ある日突然モニカの前から消えてしまった。

当時の悲しみまで蘇りそうになるから、思い出したくはない。