追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

「そういうことに気をつけろと言ったつもりじゃ……いや、うん。俺が頑張るからモニカはそれでいいよ」

ハンスがハハと笑ってモニカの頭を撫でた。

大きな手はごつごつとして温かく、モニカを見つめる目は兄のように優しい。

恋愛視されている雰囲気ではないけれど、年頃の男性に親しげにされてモニカの頬が色づいた。

「あの、ゾフラム騎竜兵隊長様」

「モニカにかしこまった呼び方してほしくないな。ハンスでいいよ。なに?」

「ハンスさんは元風の精霊憑きだと聞いたんです」

バーヘリダムに来て二日目、夜空の散歩に誘われた時にシュナイザーがそう言ったのだ。

「精霊憑きが生まれるのは聖地のあるロストブだけだと思っていました。バーヘリダムにもたくさんいるんですか?」

ハンスはそれに答えてくれず、悲しそうな目でじっと見下ろしてくるからモニカの心臓が波打った。

(私、いらないことを聞いてしまったのかしら?)

ツンツンした短い髪をひと撫でしたハンスが近くの木の枝に視線を逸らしたが、枝ではなくどこか遠くを見ているような目だ。