恋と旧懐~兎な彼と私~


「え……」



断られるとは思ってなかった。

ある程度仲がいいと確信していたからだったのに…

二人きりならともかく,弘なら来てくれるんじゃないかと思ってた。

まさか暁くんより先に弘に断られるなんて……

いろんな意味でメンタルが死にそう。



「そんな顔すんなよ。何で2人でって誘わないの?」



あ,なるほど。

そっちね。

私は顔に出さないように心の中でそっと安堵のため息を吐いた。

彼は知ってるから(こんだけ会いに来てたら他の人も皆知ってる)遠慮してるんだ。



「バカでしょ,来てくれないに決まってるじゃん……むぅ」



弘とも出掛けてみたい気持ちは本当だし,だからこそ誘ったのだけど,本命はそこ。



「自分で言って落ち込むな」

「だって出掛けてみたいんだもん」



あ~あ。 

チケットも勿体無いし陽菜でも誘って行くしかないかなぁ。

ぽうっと空中に視線を向けたとき。



「別に…2人でも良いけど。タダになるなら,いないと思えば同じだし…」



絶対にあり得ないと思っていたことが起きた。


「え! 本当!?」



ぼそっと呟かれたそれに,私はすぐに飛び付く。

そしたらちょっとしまったって顔をしたけど,もう取り下げられない。