恋と旧懐~兎な彼と私~

     
             
            
             
まぁ,いいや。
            
             
             
「イカ焼き食べられればそれで」
             
「そういえば俺,この前年中イカ焼き売ってる店見つけたよ」     
             
「ほんと!? どこ!」
             
「なんかこの近く。今度教えたげる」
            
             
          
これはきっとそんな機会来ないやつだ。

私は半目になった。
           
長年培ってきた勘である。
            
結局,近くのval○rで50円弱のやっすいお茶を購入した私と伊希。       
           
ある程度涼んでまた外へと繰り出した。
           
まぁ知り合いも結構いるもので,
            
            
            
「わっ」       
              
            
             
とお互い驚きと喜びの混じった声をあげると,立ち止まるわけにもいかず手だけ振りあう。
             
             
             
「お昼なに食べる? あったこ焼き割り勘しない?」        
            
「んー」         
            
            
             
私がいろんなものを食べたいからと伊希に提案すると,伊希は気のない返事をした。
            
そんな伊希の肩をバシッと叩いて私は
            
             
            
「まずはイカ焼き!」
             
「イテーわバカ」    
             
             
             
ぐたぐた言う伊希の二の腕をつかんで歩き出す。
               
そんな私を見つめる視線にも気付かずに。