恋と旧懐~兎な彼と私~

ガチャリと開いた扉の向こう側の人物をみて,私は噛みつくように言う。
               
               
             
「伊希! やっぱりまだ準備してなかった!」          
              
「愛深。あれ,11時半じゃなかった? ごめん寝てたわ。ちょっと待って」
             
              
             
彼は家の中に引っ込んでいく。  
             
高田 伊希(たかだ いき)
              
私の幼馴染みだ。      
              
休日に2人で出掛けるのは1年ぶりかな。
             
家が近いわけでもないのに,この年まで幼馴染みとして機能しているのは,
            
1,親同士の仲が良いこと。
            
2,伊希が異性とか気にしない性格なこと。
               
等々,その全てが偶然にも綺麗に折り重なったからだ。            
            
そしてやっぱり……と私は私が迎えに来ると約束して良かったと思った。