ー10年後。



「子供は子供で可愛いけど,圧倒的に愛深が足りない」



さみしがり屋で甘えん坊気質な彼は変わってない。

兎みたいだ。

でも私も人のこと言えないわけで……こうして抱きつかれると嬉しくなる。

ソファーに座っていた私は,振り返って唯兎くんの首に手を回した。



「私も……その,唯兎くんにぎゅってしてもらえて嬉しい……」

「……愛深はバカなところが何にも変わってないね。名前もいつまでたってもくん付けだし」

「え!?」



ひどいと見上げると,ちゅっと掠めるように唇を奪われた。

私は一瞬で静かになる。

何回だろうと唯兎くんに慣れない。

名前呼びも。



「二人もすぐ起きちゃうから,今はこれで我慢してあげる。ただし今は,ね…? はぁー。あっぶないなほんと。ちゃんと覚悟しといてね?」



私は恥ずかしさでこくこくとうなずく。

2人……私達の宝物。

双子で深兎(みと)ちゃんと愛兎(まなと)くん。

ちなみに愛兎がお兄ちゃん。

名前は二人で決めた。

私が2人合わせて



『愛情深い兎』



唯兎くんみたいに育って欲しいって願いで提案して,唯兎くんが頷く形で決定。

名前を共有するみたいに助け合いながら生きて欲しいという意味もある。

いいねって唯兎くんは直ぐに言ってくれた。

でも,彼のなかではちょっと意味が違うらしい。

いつか教えて貰うんだ。

今はきっと教えてくれないから,子供が大きくなった頃にでも。

こんなにも幸せな今を作るのは,いつだって過去。

またごはん誘おうかな,なんて,私は大好きな皆を思い出す。

眠っている2人に指を近づけて,私の指をきゅっと掴んだ小さな温もりに,私は幸せを噛み締めた。