恋と旧懐~兎な彼と私~

「そうだっ,俺名前聞けたんだよ! 見つけて,御礼言って,教えてもらった!」

「えっ良かったね」



普通に良かったと思う。

慧いつもキョロキョロしてたし。



「えっとね,橘 寧々(たちばな ねね)さん!」

「へぇっ,可愛い名…」

「は?」



私は驚いて振り向く。

それは慧もだ。

今の低い声を出したのは……



「弘?」



弘は何故か不機嫌だった。



「あ……いや,その人彼氏いるから止めた方がいいよ」

「え…」

「弘,知ってるの? その先輩」



ショックを受けた様子の慧に変わって私が尋ねる。



「……まぁ」



そういう弘は,どこか歯切れが悪い。

そして機嫌も悪く,焦ってるみたいでもあった。



「愛深ぃ~。放課後,前んとこ」

「ん,分かった。前んとこね」



突然そんなこと言われた慧に,私だって何も思わないわけではない。



「おい。勝手に勘違いしてるうちはほっとくんじゃなかったのかよ」

「うるせぇわ。知り合いだったんだよ」

「なんか怪しい」

「……」



なんて声をかけたらいいんだろう。

そう考える私の後ろで,何やらボソボソと話し声がした。