ばいばいって言えるまで

就職した会社は残業が多いところだった。その上、上司に誘われて断れずに飲み会に行くことも多かった。

彼女のことは大切だった。だけど、それを断って嫌な顔をされるのも嫌だった。結局これは自分を優先していたのと同じだと思う。



周りに置いていかれないように、必死でしがみつくので精一杯の日々だった。

いつも焦っていた。何かに追われていた。それがイライラに変わることも多々あった。



ーー優しい彼女に当たり散らすことも日常茶飯事だった。ほんとうに、最低だった。



「もう少しはやく帰ってこられない…?」
と言った彼女の唇はとても震えていた。気を遣わせていたのは自分なのに、気を遣われていることに、気を遣わせていることに、イライラしたおれは彼女に強く当たった。

毎日自分の好きなものばかり作っていることも知っていた。時間をかけていることも知っていた。



それが捨ててある時があるのも、知っていた。