おれは最低な男だったと思う。本当に。
好きな人を傷つけることでしか自分を守ることが出来なかったのだから。
この家こんなに広かったのだろうか。こんなにも静かな空間だったのだろうか。1LDKの部屋にはいまひとりしかいない。
彼女は1週間前に家を出た。おれは高校生ぶりにフリーになったというか、振られた。
彼女がいない部屋は世の中から自分ひとり取り残されたと錯覚してしまうくらいに静まり返っていた。
もうこの家が賑やかになることはないだろう。
彼女は優しかった。高校生の時も大学生の時も社会人になってからも表で騒ぐタイプではなかった。
どちらかと言えば見えないところで頑張っているような子だった。そんな彼女のことがとても好きだった。
だけど、馬鹿な自分はそんな彼女を自ら手放した。



