デートのことを知っている華恋ちゃんはニヤニヤしてヒジでつついてくる。



「か、華恋ちゃんっ。甘えるとか、そんな……っ」



放課後会えるだけで嬉しいのに、わたしから求めるなんて恥ずかしいよ。



「えー? 歌桜がお願いしたら可愛くてどうにかなっちゃうと思うのにな〜。むしろ、あのイケメン生徒会長の甘くなるところをおがめたい」



願いごとをするように、華恋ちゃんは指を絡めた両手を胸の前に持ってきて前後に振るわせた。

甘くなるところ……。

華恋ちゃんや学園のみんなは、凌玖先輩のとろけるような顔を知らないんだもんね。

わたしだけ知ってるのは、嬉しいかも……。



「歌桜」



愛おしい声が聞こえてきた。

廊下のドアから顔を出して軽く手を振る凌玖先輩。