『慶太さん、おめでとう』


『ありがとう、瑶子(ようこ)さん』


『天沢グループの役員なんて本当にすごい。慶太さんの努力の賜物ね』


『いや、君が支えてくれたおかげだよ』


ネクタイを締めてもらいながらの会話。


僕の妻は、かなりの美人で才女で気が利く。


こんな完璧な女性はなかなかいないだろう。


『行ってきます』


『行ってらっしゃい、頑張ってね』


天沢社長から紹介されて、渋々お見合いした。


社長の顔を潰すわけにはいかず…


僕は結婚した。


夢芽ちゃんへの想いが募っていたのは確かだったけど、律の奥さんをいつまでも未練がましく想い続けることは…


止めなければと思っていた。


そんな時に持ち上がった見合い話。


前を向くチャンスだと思った。


夢芽ちゃんと比べたら…なんて、妻に失礼だと思っても、それでも、最初はいろいろ考えたりもした。