何かを考えるよりも先に傷つき,今まで考えようともしなかった現実にとても悲しくなった。

そして,何で今その表情をしたのかと理不尽に怒りたくもなった。

悔しい。

ずっと一緒にいたのに気付けなかった自分が悔しい。

奏詞の目を1度も自分に向けられなかったことが悔しい。

奏詞にあんな顔をさせられるあの子が……羨ましい。

分かってる。

こんなのは,一方通行で自分本意な……嫉妬。

私は意図的に無表情を作った。

誰に何の感情も見せないように。

バレてはいけない。

あの子が彼女になって,彼女と言う存在が出来たら,奏詞は離れていってしまうかもしれないから。

それだけ頑張っても,やっぱり泣きそうで,唇が震えないように気を付けながら叫んだ



「もう! 奏詞遅い! 先帰るからね!?」



今まで,私は奏詞がどれだけ遅くても待っていてあげていた。

だから少し不自然かもしれないけれど,そんなのは明日から頑張れば直ぐに解消される。

私が帰るのは奏詞が遅いからであって他の何物でもない。

名目だけしっかり作って私は走った。