スノー&ドロップス

「だから? 僕らは他の兄妹とは違う。茉礼だって分かってるだろう。僕らの関係が異常だってことくらい」

「それは……」

「結婚だけが幸せじゃない。茉礼さえいてくれたら、僕は何もいらない」

 寂しい声だ。どんな顔で話しているのか、彼の胸に埋まる私には知る(よし)もないけれど。

 ただ、この腕の中で優しく頭を撫でられている事実だけが、私の乱れる心を落ち着かせていく。

「それと、前髪は切らないで。もしも切られようものなら、あの綺麗な顔を(つぶ)してしまいそうだから」

 そんなおぞましい台詞を、涼しい顔でつぶやくなんて。心なしか、語尾が笑っているようにも感じられる。


「僕だけのために生きて欲しい」


 脳内では優しい鶯くんが屈託(くったく)のない笑顔を見せているのに、目の前にいる彼は知らない人のようだ。

 疼く首筋から身体中に毒が回っていくみたいに、この場から動くことが出来ない。

 いつからなんだろう。見えない鎖で繋がれて、鶯くんという世界から抜け出せないでいたのは。


 こんな状況でさえ、必要とされていた歓喜が恐怖心の後を追いかける。