スノー&ドロップス

 痛くて、苦しくて、胸が熱い。
 首を振りながら、私は驚きでこぼれ落ちそうな瞬きを繰り返す。

「そう、よかった」

 いつも通りの穏やかな表情。固まって動けない私の肩を抱きしめて。そして、耳元でささやくの。

「僕を好きになればいいのに」

 まるで、死のカウントダウンをするようにトドメを刺す。
 骨が砕かれた足は崩れ落ちて、抱き止めてもらわなければ体は床へと倒れていただろう。

「鶯くん……なんで、こんなこと……。私たち、兄妹なのに」

 何羽もの鳥が一斉に飛び立つような、騒がしい心臓音を隠したかった。

 兄である鶯くんに対して〝好き〟だなんて、一生口にしてはいけない言葉だと思って生きてきたから。

 鼓膜(こまく)の近くで響く鼓動(こどう)は、振り子のようにトクトクと悠然(ゆうぜん)たる音を奏でている。
 どうしてそんなにも、この人は平静としていられるのだろう。