スノー&ドロップス

「なんかイラつく。俺も男なんだけど。男なんて、好きじゃなくても出来るからね」

 髪がさらりと頬を撫で、シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。首の付け根に冷んやりとした感触。それはすぐに甘い刺激に変わる。

「な、何して……っ」

 弱々しく押した体は緩やかに離れた。まだ彼の感触が残る首筋を押さえる。頬がじわじわと紅潮していく。
 鼓動を刻む音が大きくなっている。これは驚きからの現象で特別な意味はない。

「青砥さんは、好きじゃない相手とキスしてた方がいいんだ。それって、誰とでもするって事だよ」

 (さげす)むような瞳。心の内を見透かされているみたい。

 彼の言う通りだ。自分の都合の良いように解釈しようとしているだけで、誰かの気持ちなんて考えていない。鶯くんに、そんな人であって欲しいわけじゃないのに。

「でも、ごめん。ちょっとやりすぎた」

 頭を押さえる藤春くんに慌てて声を絞り出す。なんともないことを伝えたくて。

「あの、気にしないで下さい。私のために、こんなことさせて、逆に申し訳ないです」

「それ本気で言ってる?」

「はい」

「青砥さんって、純粋そうな顔してサクッと傷口えぐるよね」

「えっ、ええ?」

「いや、でもどうしようかな……それ。確実に地雷踏んだ気がする」

「それ……?」

 首の付け根にそっと触れてみる。淡い余韻を残す部分は、ほんのり熱を帯びていた。