スノー&ドロップス

「た、試しにしてみてくれませんか?」

「……は?」と間の抜けた声が地面に落ちた。
 自分の考えを正当化したくて、気がおかしくなっていたように思う。

「そんなこと言ったら、ほんとにしちゃうけどいいの?」

「えっと、少し待っ」

 口を開いた時には、すでに雪みたいな美しい顔が迫っていて、私は目を見開いたまま硬直していた。

 どうしよう。この肩を押し飛ばさなければ唇が触れてしまう。

 でも、もし藤春くんとして何も感じなければ、鶯くんとあの人のキスも挨拶のような行為だった可能性が出来るわけで。

 ぐっとつぶった瞼に、優しい雫が落とされる。胸がキュッと締め付けられるような不思議な感覚。
 恐る恐る外の明かりを見る。夕焼け色に染まる彼と目が合った。

「ねえ、何してんの」

「えっ……はい?」

「俺がオオカミだったら、今頃喰われてるよ」

「す、すみません……藤春くんは女の子みたいにキレイなので、頼みやすいというか。どうしても、証明したいことがあって」


「ふーん」

 口角をピクッと上げた藤春くんの目はナイフのような鋭い瞳へ変わる。

「あの、私……なにか怒らせました?」

 カシャンと金属の擦れる音が鳴る。ブランコを掴む私の手を覆うように、大きな手のひらが重なった。

「兄ちゃんが誰かとキスしてんの見ちゃったんだ? 信じたくないから、俺にあんなこと言ったの?」

「えっ、どうしてそれ……」