スノー&ドロップス

「急にどうしたの?」

「もし、その、鶯くんに好きな子が出来たら、私がずっと傍にいるって役割は、不要になる……かなって」


 ーー僕の傍にずっといて欲しい。離れていかないで。茉礼は僕を裏切らないで。

 両親が再婚してしばらく経った頃、鶯くんはそう言いながら泣いていた。
 私が見た彼の唯一の涙。どんな時でも彼の傍にいたいと思っていたし、一人にさせないと誓った。

 でも、時は良くも悪くも止まる事なく流れ続ける。

 不意に視界が暗くなり、ホワイトローズの香りに包まれた。同じ柔軟剤の匂いでも、自分の物とは異なって感じるのはどうしてかな。
 胸がキュンと狭くなって、背中に手を回したくなる。

 だけど、見知らぬ女子と触れ合う鶯くんが脳裏に浮かんで、その手を止めた。一気に現実へ引き戻された気分。

「それって、早く僕から離れたいって事?」

「ち、違う……その逆で……。でも、もしそうゆう子が出来たなら、こうやってハグしたりは……しない方が良いかなとかも、思うし……」

「茉礼って、ずるいね。僕の手を振り払いもせず、こんなに大きな心臓の音させて。そんな事言ってさ。僕のこと試してる?」

 顔色ひとつ変わらない鶯くんの眼は、私の瞳を真っ直ぐ捉えている。


「今までしてきた約束事、全部なくそうか」


 時の流れに逆らうように、唇の動きがスローモーションに見えた。