スノー&ドロップス

 スマホの着信音が部屋に響いた。ドクンと心臓が波打つ音が聞こえる。

 きっと、鶯くんだ。内容は想像がつく。

 安易(あんい)にここまで付いてきたけど、万が一、鶯くんにバレたらと思うと冷や汗が止まらない。
 今度こそ、鶯くんに嫌われる。

「出ないの?」

 藤春くんが見ている。早く出ないと変に思われる。

「……はい」

『茉礼、今日遅いね。心配だから迎えに行こうと思うけど、今どこ?』

「学校のことで、遅くなって。これから……帰るところなの」

『じゃあ、駅まで行くから』

「うん、ありがとう」

 乾いた喉を鳴らす音が、ボタンを押す指が、震えていた。苦しかった息が少し楽になる。

「顔色悪いけど大丈夫?」

「ブラウス……ありがとうございます。これ借りて……帰ります」

「待って」

 掴まれた手はゆっくり引かれ、私はその場にひざをつく。
 蜘蛛(くも)の糸に絡められるような視線から目をそらせなくなる。

「そんなに怯えて、アイツに何されてんの?」

 首を振るけど藤春くんが納得するはずもなく、私の手首を優しく掴んだまま動かない。

「暴力?」

「鶯くんは、そんなことしない」

「じゃあ、なんで泣いてんの?」

 温かい線が頬を伝い、初めて自分が涙をためていた事に気付いた。慌てて手の甲で拭うけど、その手も彼に奪われる。