スノー&ドロップス

「とりあえず、これ着てみて。シャツのサイズは同じくらいだと」

 ブラウスを受け取ったとたん、部屋のドアが開いた。ツインの団子ヘアをした女の子が顔を出す。

 離れた短い眉毛。くりっとした大きな目にぷりっとした唇。美に(うと)い私ですら、可愛いが似合う人だと察知出来た。

 だけど、どことなく幼顔(おさながお)で背格好は小学生に見える。妹もいるのかな。

「うわっ! 人の部屋勝手に開けないで、よ」

 藤春くんの言葉には耳を傾けないで、女の子はぽかんとする私の前へ立った。

「キミ……」

 肩から腕、そして指先へと滑るようにして手を掴む。お腹の底から緊張が押し寄せて来る。

「艶やかで理想的な黒髪……よい」

「あ、あの?」

 ぐいぐいと詰め寄られている。

「うちに髪を切らせてくれ」

 女の子が私の髪をさらりと流す。まるで王子が姫の手を取るような格好で。

「髪を、切る?」

「いいから。とりあえず出てって」

「ケチ〜! 雪のいけず〜」と(なげ)きながら、彼女は部屋の外へ押し出されて行った。嵐が過ぎ去ったような静けさ。

 藤春くんの……お姉さん。とても不思議な空気を持つ人だった。