スノー&ドロップス

 女子の扱いに慣れている彼が、こんな些細なことで喜ぶなんて。消そうとしても、嬉しさが伝染して頬に滲み出そうになる。

「今からうち来ない?」

 膝に頭を乗せた藤春くんが、顔を覗き込むように見つめている。

「…………えっ⁉︎ あの、いえ」

 変に裏返る声。熱に病んだ時のように頬が火照る。
 さっきまで、助けてくれた【ただのクラスメイト】だったのに、【ヒロインを優しく守ってくれる美少年】と被る。私のヒーローは鶯くんだけなのに。

「ほら、その格好だと家帰りにくいでしょ? 俺、姉がいるから。役に立てるかと思って」

「その通り、です」

 確かに。割れた眼鏡と破れたブラウスでは、お母さんや鶯くんの前に姿を出せない。心配させたくないし、今日のことは知られたくない。

 赤みが残る手首を見ると、また不安が押し寄せてくる。

「一緒に帰らない?」

「…………はい」

 とても綺麗な顔で、胸が和らぐ笑みを浮かべる人だ。暗闇の中で光を照らしてくれるような。どことなく鶯くんと似ている。

 だからなのだろう。差し出された大きな手を、迷いなく掴んだのは。