スノー&ドロップス

 灰色の床には取れたボタンと眼鏡の破片がそのままになっている。拾いたくても、足が氷のように固まって動けない。

「もう話しかけないようにするよ。青砥さんに近づかないから」

「……え?」

 寂しい音が流れている。静けさを取り戻したこの空間に、私の心臓からトクトクと小さな音が出ている。
 鶯くんがいてくれたら、何も要らないと思って生きてきた。友達、青春、恋、学生におけるすべての時間。

 でも、今日助けてくれて傍にいるのは藤春さん。この人からも、たった今関わらないと告げられた。
 殻を破れなかったから。
 結局、私はひとりぼっち。

「学校では」

「学校では?」

「だから、放課後だけ会わない? 授業が終わったら、待ち合わせて」

「どうして、そこまで……。私なんか、放っておけばいいのに。藤春くんなら、他にもっと可愛い子が」

 話しながら、視線を感じて隣に顔を向ける。じっと見つめた、それでいて少し驚いたような彼の眼差しと触れ合った。

「名前、初めて呼んでくれたね」

 今までに見たことのない顔をしていた。下瞼と口角が持ち上がっている柔らかな表情。

 でも、どこかで見たことがある。そうだ、漫画で読んだ男の子が主人公と心を通わせた時にしていた顔に似ている。