スノー&ドロップス

「てめぇ、いい加減に!」

 前髪中央分けの男子が殴りかかろうとすると、さらにハサミの刃を狭めて言う。

「動くと、この人の鼻が削げちゃいますよ?」

「や、やめてくれぇぇ!」

「女の子に暴力振るうとか、生きてる価値ないでしょ」

「やべぇよ、こいつイカれてやがる! 勘弁してくれ!」

「さよなら、センパイ」

 腰を抜かしながら逃げていく男子たちに、黒い笑みを浮かべつつ、藤春さんは冷淡な声を投げ捨てた。

 恐怖の糸が解けたからなのか、体の震えが止まらない。この人が来なかったら、今頃……。

 結ばれているネクタイが丁寧にほどかれ、赤くなった手首がヒリヒリと痛みを帯びている。

「ごめん、怖かったね。もしかして、他にも何かされてる?」

 黙っていると、ふわりと優しい香りがして前から柔らかな布を掛けられた。今まで彼が着ていたベージュのカーディガンは人肌の温もりを感じない。それでも、温かさが伝わった気がした。