スノー&ドロップス

「僕の言うことを素直に聞いていれば良かったんだ。人間の嫉妬って、茉礼が思ってるよりもずっと恐ろしいんだよ」

「……ごめんなさい」

 きつく締め付けられていた体が自由になった。
 涙まみれの頬を彼の親指がしっとりと拭う。髪は乱れて顔に張り付き、不格好な姿が急に恥ずかしく思えてくる。全てを覆い隠すほど。

「茉礼の泣き顔が見れてよかった」

 鶯くんは、穏やかに微笑んだ。海底に沈んでいくような、決して明るくない声をして。

 思わず私は目を見開いた。目の前に映る(にじ)んだ景色を鮮明にするために。

「苦しい時は我慢しなくていいんだ。僕の前では、気にせず泣いていいから」

「……ありがとう」

 守ってくれるヒーローは鶯くんだけ。鶯くんは、ずっと味方でいてくれる。優しく手を広げて待っていてくれる彼に甘えていたかった。