スノー&ドロップス

「なんだか、呪いでもかかってるみたいだね」

 濡れた長い睫毛。少し血走った白目。痛いけな表情を綺麗だと思ったのは、初めてだ。

「眼鏡、髪、スカートの長さ。それを選ぶ人のセンスを疑うな」

 あえて意地悪な言い方をしてみる。
 何か反論したそうな唇。返答は来ないと分かっていた。

 これまでの過程から、青砥鶯祐が関わっていることにおそらく間違いないだろう。この兄妹に異常な色が見え隠れしているのは確かだ。

「青砥さんのお兄さん。怖そうだよね」

「……優しいです」

 少し不満そうな声色。都合の良いことだけは、感情が先走って答えられる。話したくないことを忘れて。

「どうかな? 隠してるかもしれないよ?」

 彼女の指を沿わせて俺の上唇をゆっくり上げる。尖った犬歯(けんし)が現れて、白い指先を軽く噛む。引っ込めようとする手を逃さないように絡めて。

「君を喰らおうとする牙をさ」

 そんなことはない。と言いたげな目をして、青砥さんは手を振り払った。桜の花びらで染め上げた顔をして。

「三月三日」

 何が? という表情で彼女は首を傾げる。

 誕生日である三月三日までに心が動かされる人ーー
いわゆる最愛の人と出逢えなければ、俺は雪の結晶となって消えてしまう。

 百年に一度しか生まれないとされている男児の運命(さだめ)だ。