『これ以上藤春さんと話す気はないです。何しに来たんですか』
「青砥さんとお昼食べに?」
『なぜですか?』
「仲良くしたいから」
唇を固く閉じたまま、彼女は顔を横に振る。瓶底のガードがないからなのか、虚な目元と薄紅色をした頬が妙に色っぽく感じる。
「昨日、俺が帰ったあと」
言いかけた言葉が喉に詰まる。彼女が腕を曲げた拍子に、袖口から包帯らしき物が見えた。
「どうしたの? その手」
胸の前で手首を隠すように掴んでいる。急激に冷却されたように青白く映る顔。ちらつく蛇の視線。
「それ、兄さん?」
「ち、違います」
「じゃあ見せて」
「ほんとに、何も……」
ーー約束を守れない私が悪いの。これ以上、鶯くんを裏切りたくない。
泣いているような切ない声だ。聴こえるはずのない音は、また俺の心に入り込んで空気を食い尽くす。息が詰まる。
一度壊れて直したものは、完全とはいかないらしい。
「青砥さんとお昼食べに?」
『なぜですか?』
「仲良くしたいから」
唇を固く閉じたまま、彼女は顔を横に振る。瓶底のガードがないからなのか、虚な目元と薄紅色をした頬が妙に色っぽく感じる。
「昨日、俺が帰ったあと」
言いかけた言葉が喉に詰まる。彼女が腕を曲げた拍子に、袖口から包帯らしき物が見えた。
「どうしたの? その手」
胸の前で手首を隠すように掴んでいる。急激に冷却されたように青白く映る顔。ちらつく蛇の視線。
「それ、兄さん?」
「ち、違います」
「じゃあ見せて」
「ほんとに、何も……」
ーー約束を守れない私が悪いの。これ以上、鶯くんを裏切りたくない。
泣いているような切ない声だ。聴こえるはずのない音は、また俺の心に入り込んで空気を食い尽くす。息が詰まる。
一度壊れて直したものは、完全とはいかないらしい。



