スノー&ドロップス

 彼らの小競り合いは日常化しつつある。特に梅雨の時期は気鬱になりやすかったのか、昼間になると決まって口喧嘩が始まった。俺の意思なんてそっちのけで、好き勝手に言っている。

 きっと、この人たちにとって俺は所有物なんだ。近くに置いておけるならそうしたい。ないならないで良い。

 俺は明るさを装った空虚な笑みを浮かべる。まるで仮面のような自分でない顔。

「ごめんね、ちょっと用事思いついちゃった。お昼適当に済ませるから、わたしの事は無視してくれていいよ」

 背を向けた教室から「えー」という声が小さく聞こえる。気に留める事はなく、俺は階段を下りて三階へ向かった。

 社会科資料室のドアを、軽く握った拳で叩く。間髪入れずに開けた先には、机に弁当箱を広げて座る青砥さんの姿があった。

 長い前髪は斜めに流され、耳元の質素なピンで固定されている。状況を把握しきれていない表情の彼女。露わにされているくりっとした瞳が放心と止まっていた。

「一緒にいい?」

 相変わらず返答はなくて、すぐに眼鏡が目を覆う。見えていた額も隠された。予想通りの反応。