スノー&ドロップス

 賑やかな教室。窓側の一番後ろで、ひとり下を向いて座る青砥さんの姿があった。雛人形のような艶やかな黒髪は、目を隠す前髪によって悪目立ちしている。

 入学当初は幽霊や座敷童子(ざしきわらし)と陰で笑う人もいたけど、今は空気のような存在になっている。

 列を挟んだ隣席から目を向けても、彼女は俺に気付きやしない。
 だから、彼女の机の前にしゃがみ込んで隠している顔を覗き込む。

「おはよう。もう熱大丈夫なんだね」

 話しかけられたことに驚いた顔をして、気まずそうに彼女は深く頭を下げる。まるでチャックが付いているように、ギュッと口を(つぐ)んで。

「昨日は話してくれたのに。もしかして、キスしたから怒ってる?」

 それ以上何も言うなと訴えるように、林檎のような頬をした彼女は首を横に振る。長い髪がさらさらと波打って、ほのかにシャンプーのいい香りがした。

 周りの視線がふらふらと飛び交っている。

 ーー藤春さんと、青砥さん? 二人って、何か接点あった?

 ーーえっ、あの子って話せる口あるの? まだ声聞いたことないんだけど。

 内緒話をする仕草が目立ち出して、そのせいか青砥さんの頭は余計に落ちていく。早くこの場を終わらせたいという表情をして。

「じゃあ、もう話しかけるのやめるね」