スノー&ドロップス

 口から生まれたと言っても過言でない姉の話を聞き終えて、俺は普段通り高校へ向かう。

 クールで格好良いと有名な青砥鶯祐(あおとおうすけ)。それが、アイツの名前らしい。

 昨日、俺はクラスメイトである青砥茉礼(まれ)の家を訪れた。あの兄妹には何かあると確信したのは、帰り際に二階の窓から感じた視線。あれは異様だった。

 すぐにカーテンが閉められたけど、蛇が睨んでいるような目は人を殺めそうだった。


 生徒たちが挨拶を交わしながら校門を潜る。クラスの女子が横に張り付き、言い慣れた口先で「雪ちゃん」と呼んだ。綺麗だと女子と疑わずに接しられるのは、立場上都合の良いことだと分かっている。

 でも、心から嬉しいと思ったことはない。「お前は男じゃない」と言われているようで。

「雪ちゃ〜ん! 数学の宿題やって来た?」

「うん、やって来……たよ」

 さり気なく絡められた指先に目が泳ぐ。

 じわじわと氷を溶かすような温度が、体に染み出て。

 声は聴こえない。そのままの状態で、わたしは会話を続けた。

「また見せて欲しいの?」

「いい? もうサッパリで」

「じゃあ、後でわたしの席においでよ」

「ありがと。雪ちゃんって、ほんと天使。大好きっ」

 小ぶりの唇を緩めて、彼女は頬を紅潮させた。

 まとわり付く手を振り払う事も出来るけど、そうしないのはなぜか。この子を嫌いなわけじゃないし、彼女が嬉しそうなら別に良いか……が本音。