スノー&ドロップス

 美容師の両親を持つ俺たちは、美容室兼自宅に住んでいる。うちの〝hair & room エアシナ〟は、近所に住む年配の人が客層の三分の二を占め、残りは学生が足を運ぶ。

 姉の月は学校から帰ると、一階の美容室に入り浸り二人の手伝いをしている。どうやら愛嬌だけは良いらしく、五、六十代の客によく気に入られるようだ。

 将来はこの店を継ぐつもりのようで、今は俺と友達の髪を借りて美容師(もど)きを楽しんでいる。

 俺は全く興味がない。それまで生きていられないから。


 自分が普通じゃないと知ったのは、小学一年の時だった。女友達と手を繋いだのがきっかけ。

「雪ちゃんの手って、どうしてそんなに冷たいの? 寒いの?」と、その子は不思議そうに俺を見た。

 なぜ君の手はそんなに熱いのか。心の中でつぶやいた言葉を飲み込んだ。
 先生が腫れ物を扱うように彼女を遠ざけて、「その話はもうやめましょう」と促したから。

 ーーこの子は普通じゃない。人間とは思えない。怖いからやめて。

 その瞬間、俺は絶望を聞いた。世界が終わる音だと思った。