頭を傾けて、さり気なく乗っている手を交わした。

「高校生の兄妹(きょうだい)って手繋いだり、おでこで熱測ったりするもん?」

 頬張っていたパンかトマトか知らないが、姉は数秒動作を停止したのちに無表情のまま口を開く。

「それ、うちと想像出来るか? 全身の血が抜けるほど気持ち悪くて死ねるぞ」

「……俺も吐く」

「言っとくが、さっきの美しく成長したの主語は髪だぞ。そこ勘違いするな?」

「してないから。てか、いつまで女のカッコしてなきゃならないの?」

 肩まで伸びた髪をつまんで弾く。

 雪女の家系に生まれた俺は、物心がついた頃からピンクの服を着て、長い髪を結んでいた。

 女しか生まれないとされる中、100年に一度、男児が産声を上げる。その子は災いを持つ者とされ、神に(まつ)られる運命にあるらしい。


「雪女の末裔は、心を凍らせて喰べる」

「……は?」

「うちの高校で、七不思議のひとつとして噂になっておる」

「なにそれ」

 どうやら、姉の高校で妙な話が話題となっているようだ。

 僕らは他人に正体を隠して生きている。もちろん、雪女の末裔が存在することも認知されていない。

 ……心を喰べる?
 バカバカしいと笑う僕の隣で、姉は黙ったまま口を閉じていた。