二階リビングにあるテレビの情報番組から、梅雨明けという言葉が流れてくる。

 目の前に座る茶色の団子頭に視線を向けながら、ジャムを塗ったトーストを頬張った。無造作に結われた髪は、落ちそうで落ちない絶妙な釣り合いを保っている。

「……なにさ? さっきからじろじろと」

 見た目と声のバランスは悪い。率直して言うと、小学生が二十代くらいの色気付いた声を出しているほどに、アンバランスだ。

「いや別に。その頭、引っこ抜きたくなるなぁと思って」

「お主、喧嘩売っとるのか?」

「冗談だよ。てか、言葉遣い」

 姉の(つき)は小柄で童顔な容姿のためか、他人の目にはか弱い女子に映るらしい。この外見に騙された男は何人もいる。

 実際は、気が強い上に昔好きだった戦隊ヒロインアニメの影響で言葉遣いが変。機嫌が悪くなると、すこぶる悪い。おまけに気分屋でもあるから、正直面倒な性格なんだ。

「……ゆきぃ〜、久しぶりにじっくり見てたら、美しく成長して来とるな。やだっ、控えめに言って最高だぞコレ」

 目を八の字に吊り上げていたと思ったら、瞬時に柔らかな表情へと移り変わって俺の髪を撫でている。情緒不安定かと言いたくなるけど、これが正常時の藤春月だ。