スノー&ドロップス

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 日曜日は梅雨空。空一面が雨雲に覆われて、鬱陶(うっとう)しさを強調している。
 隣を歩く茉礼の白いスニーカーは泥で汚れ、長いスカートも丸い染みが飛び散って、雨に嫌われているようだ。

「服汚れてる。今日はやめておいた方が良かったかな」

「ううん、大丈夫。鶯くんと映画なんて久しぶりだから……楽しみ」

 長い前髪を横に流しはしているが、くりっとした大きな瞳を隠す眼鏡は在中だ。服装もパーカー、ロングスカートにスニーカー。お洒落のおの字もかすっていない。

「あれってカップルかな? 彼女の方、びどくない?」

「イケメンなのに女の趣味残念だよね」

 すれ違う人が僕たちに心無い言葉を浴びせる。

 茉礼の眉が若干下がるのを見て、そっと彼女の手を握った。
 そうすると、小さな手は力弱く握り返してきて、白い頬を淡い桃色に染める。

 (はた)から見たら、僕たちはそこらにいる学生の恋人同士に見えるのかもしれない。

 でも、それは違う。茉礼は僕を恋愛対象として見ている訳じゃない。もちろん、こっちにもそんな感情はない。

 いわゆる依存と支配の関係であって、互いの需要と供給が合致していれば乱されることのない世界。
 心地良い居場所を求め合って、心の隙間を埋め合っている。

 茉礼が全てを(ゆだ)ねれば、僕が彼女の平和を守ってあげる。