スノー&ドロップス

「……だ、大丈夫」

 無意識に体が離れようと反応する。
 でも、貧弱な腰は簡単に彼の腕に引き寄せられた。顔はすっぽりと胸に埋まって身動きが取れなくなる。

「あ、あの、どうした、の?」

 つたない思考力さえ奪われて、二歳児のようなたどたどしい言葉しか出ない。

 そのうちに鶯くんの匂いが身体中に充満(じゅうまん)して、何も考えられなくなる。

「何かあったら言って欲しい。いつでも茉礼の味方だから。 僕を頼って」

 頭の上で囁かれる声に 「ありがとう」 とうなずく。幅の広い背中のシャツをぐっと掴んで。


「あれ、シャンプー変えた?」

「もうなくなったから」

「僕、こっちの方が好きだな」

 くんくんと私の頭に鼻を乗せる。
 もしも血の繋がった兄なら、気持ち悪いと言って押し飛ばすだろう。

 でも、鶯くんは違う。
 こうして脈打つ音を聞いていると安心するし、単純な単語では表せない感情が胸の底から湧いてくる。


 「私も、好き」

 髪を撫でられる指先が妙に艶っぽくて、飲んだことのないお酒に酔いしれているみたいになる。

 息が覚束(おぼつか)なくなって、いつか彼に()み殺されてしまいそう。それも良いかもしれない。


 ーーきっと、私は異常だ。