スノー&ドロップス

「軽い貧血だね。少し休んだら良くなるから、しばらく寝てなさい」

 遠のいていた視界が、ぼんやりと明るくなってくる。養護の先生の声がしてまぶたを開くと、保健室のベッドで横になっていた。あの時、私は倒れたのかと、やっと理解する。

 隣には、鶯くんが付き添ってくれていた。手を握って、まるで病院の見舞いにでも来ているような表情だ。青白い顔で、鶯くんの方が病人らしい。

 閉まったカーテンの向こうで、人が出て行く音がした。養護の先生が席を空けたのか、保健室はシーンと静まっている。

「もう平気……」

 起き上がろうとして、眩暈(めまい)に襲われた。頭に血の気がなく、ふらふらする。

「まだ寝てないと」

「ごめんなさい」

 背中を支えられて、ゆっくりとベッドへ横たわった。握っていた手をじっと見て、思い(ふけ)る。
 誰かの夢を見ていた。さっきまで覚えていたはずなのに、意識がはっきりしていくほど忘れていく。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 頭を撫でられて、少し安心する。懐かしい手の感触は、鶯くんだったのだろうか。
 再び眠りにつくのに、それほど時間はかからなかった。