スノー&ドロップス

「えっと、どうして……」

 少し距離を取ったら、その分だけ縮められた。

「なにもしないよ」

 言いながら、私の手を優しく握った。暗闇の中、思考が衰えていく。

 今出たとしても、クラスの人たちに怪しまれるだろう。問いただされるのが怖くて、眩しい向こう側へ行けない。

「今のなに? どうゆう状況?」

 ほら、ドームの外で案内役の子たちが騒いでいる。この時間が早く過ぎ去ってと願いながら、ふと思う。
 私はいつも逃げてばかりだ。嫌なことから顔を背けて、見えないふりをする。臆病で卑怯だ。

「少し話そう」

 静かなトーンで、鶯くんがつぶやく。その言葉を合図のように、パッとライトがついて夜空に星が浮がび上がる。
 キラキラと散りばめた星たちが、今にも降り注ぎそう。

「これ、茉礼も作ったの?」

「私は、このまわりの……ダンボール役。切ったり、組み立てたり」

「そっか。キレイだな」

 天井を見上げながら、ほんわりと唇の端が弧を描く。その横顔はとても優しくて、私のよく知る鶯くんだ。

「茉礼のこと、ほんとはなにも知らないんだなって」

 繋ぐ手がギュッと強まり、胸が張り裂けそうになる。目が合っていたのは、ほんの数秒でも、とても長く感じた。鶯くんの痛いほどの叫びが、伝わってきたから。

 プツンと光は消え、再び真っ暗闇へと戻る。五分の鑑賞時間が終わり、私たちは外へと出た。