スノー&ドロップス

「……茉礼、どうかした? 顔色が悪い」

「ううん、なんでもない。ちょっと、寝不足なだけだよ」

「そう」

 隣に腰を下ろして、鶯くんが私の長い前髪にさらりと触れる。そのまま唇を重ねて、ゆっくり体が倒れていく。

 甘い感覚が染み込んで、息苦しくなる。大きな手が、するりと上服の中へ入り込んだ。

「え、待って」

 思わず体を押し返すけど、いとも簡単に躱《かわ》される。手首を掴む力が強くて、敵わない。

「待たない」

 首筋に埋まる顔と、落とされるキスにくらくらする。
 鶯くんのことは好きだけど、好きだけど……違う。やっぱり、こんなのおかしいよ。

「……やだっ!」

 きっと矛盾しているだろう。頬を赤らめながら、涙をためて必死に抗う姿は、理性を失った眼には映らない。それでも、私は鶯くんを否定する。自分の中に流れる穢れと一緒に。

 手が滑って、鶯くんの頬に爪が当たった。引っ掻き傷をつけてしまい、じわりと血が(にじ)む。


「ごめん」

 口を開いたのは、私を見下ろす鶯くんの方が先だった。
 私も謝ろうとするけど、声は出ない。乱れた息を吐くだけで、物音すらしない部屋は生きた心地がしない。

 そのうち鶯くんの頭が落ちてきて、コトンと首の中に埋まる。今度は、抵抗しなかった。さっきまでの荒っぽさや危機を感じなかったから。