「その……格好……」

「うん、どう? 意外と似合ってるでしょ」

 ハハッと笑う声と、ほんのり赤らんだ頬に鼓動が波打つ。こちらにまで伝染した顔を手で覆いながら、こくりとうなずいた。

「……でも、その、いいんですか? ずっと守り続けてきた物を……壊してしまって」

 ざわざわと生徒たちが駆け降りて行き、遠のいていく。
 自分の世界を変えることは、簡単なことじゃない。たとえそれが己の望むことだったとしても、とても勇気がいる。

「もう自分を偽って生きるのは、やめようと思って」

「……え?」

「呪いだとか、関係なくなったんだよ。ありのままの姿で、青砥さんと会いたい。知ってほしい」

 まっすぐな瞳が近づいてきて、額同士がコツンと当たる。
 今まで感じたことのなかった熱がほんのりと伝わって、藤春くんの真の心に触れた気がした。