スノー&ドロップス

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 弁当を広げて机をくっつける生徒たち。
 教室に漂う空気は、昼になっても耳目(じもく)を塞ぎたくなるものばかり。

 高校生と言えば思春期真っ只中で、好奇心の塊みたいなもの。

 ーー五限目、めんどくせぇ。

 ーーてめぇふざけんなよ。死ねよ!

 ーー今週、彼氏の家に泊まることになったんだけど〜。それって、ぜったい……だよねぇ。

 怠惰(たいだ)、言葉の暴力、男女の色欲(しきよく)

「……はぁ」

 まわりに聞こえないほどのため息を吐き、すんとして席を立った。薄汚れた空気は、吸いたくない。

 いつものように弁当を持って、ひとり教室を出た。
 あんなふうには、なりたくない。

 校舎裏を歩いていくと、校舎の奥からなにやら声が聞こえて来る。誰かいる?

「……いいだろ? キスくらい、減るもんでもないし」

「……ごめんなさい」

「藤春ちゃんさぁ、知ってるよ? 女子にはずいぶん優しいらしいじゃん。なに、君ってそっち系なの?」

 思わず足を止めて、校舎の影に身を潜める。

 藤春雪が、男子に絡まれてる。でも、私にはどうすることも出来ない。ごめんなさい。